十二国記 小咄
<remembrance>





 ふとした瞬間に、懐かしく思えるものがある。


 例えば、学校だとか。例えば、お気に入りのCDだとか。
 例えば洋服だとか。

 こちらのことは嫌いではないが、どうにも憂鬱な時もあるわけで―――・・・。
 陽子は寝返りをうって、軽くため息をついた。
 こうやってここでの一日を終えるたびに、あちらの生活を思い出す。
 例えばパンが食べたいとか。例えばテレビを観たいとか。一度ぐらいパーマをかけてみたかったとか。

 陽子はくすりと笑った。
 せめて――――
 「『漢文入門』のテキストだけは持ってきたかったな・・・」
 
 
 それはいつも思うこと。
 今頃は本棚で埃をかぶっていることだろう。

 「一生使ってあげられないまま、埃の中、か・・・」

 でも。
 たぶん、それでいいのだ。

 本当に大切なものは、きっと。
 本当に必要なものは、ずっと。

 この胸の中にあるのだろうから・・・・・・。
 
 そうして時折寝返りを打ちながら、陽子は。
 消えない余韻をいつまでも、いつまでも。


 楽しんで、いたのだった・・・。



小咄第1弾でした。
 タイトルの<remembrance>というのは、「思い出」という意味です。
 memory の方が一般的かもしれませんが、これは「学んだことを覚えておくこと、または思い出す力」のことを差すのだそうで。
 remembrance は物事を思い出す、またはそれを記憶にとどめておくこと。
 そして、recollection は忘れかけていたことを努力して思い出すこと、という意味合いなのだそうです。

 なんとなく、remembrance がしっくりきたので、こちらにいたしました。ということでお勉強、終わり(笑)


 第2弾は、「帰山」のサイドストーリー、尚隆と六太の物語です。
引き続き、お楽しみ下さい。



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